アリが、あるとき、神さまに不足をもうしました。
「神さま、あなたもご存じのとおり、わたしは生まれて
からこのかた、まい日まい日汗水たらしてはたらいております。
しかし、いっこうに出世もしなければ、幸福〔しあわせ〕にも
なりません。このあいだも馬めがとおりまして、
わたしたちの、せっかく、長年かかって造りあげた
市街〔まち〕を、『あっ』というまにメチャメチャに踏みにじって
しまいました。 神さま!! 世界でわたしたちほど正直で、
勤勉なものはないと思っておりますのに、こんなみじめな目に
あうとは、いったい、どうしたわけなんでしょうか」
神さまは、静かにもうされました。
「おまえ、馬になる気はないか」
「わたしのようなものが、馬になれるでしょうか」
アリは、目をみはって答えました。
「それはなれる。も少し正直に、も少しなにかにせいだしたら
きっとなれるよ」
「わたしは、馬になりとうございます。では、これから
ぃっしょうけんめいにはげみます」
アリは、神さまのおっしゃったことを深く心にとめて、
それからというものは、前よりもいっそう正直に
いっそう勤勉にはたらきました。
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