ガとイモムシとが、あるところで出あいました。
ガ 「おや、そこに、あいかわらずウジウジとしているのは、
イモムシくんではないか」
イモ 「やあ、あなたさまはガ先生ですか。どえらいご出世
でございますな。たった二、三日前までは、われわれといっしよに、
こんなきたないところにウジウジしておられたのに、なんと、
かわればかわるものですなぁ」
ガ 「きみはいったい今までそんなところでなにをしているのだ。
なぜ、もっと思いきって、いっそくとびに、われわれのような
身分にならないのだ」
イモ 「いや、なりたいのはやまやまですが、まだ修業が
できませんので」
ガ 「修業もくそもあるものかい。おもいきって飛びさえしたら
よいのだ。わしらだって、ガになるためには、なんの修業もした
わけではない。ただ、急に、地上がいやになって、いっそくとびに
友だちと飛ぶまねをして、ちょっと飛びあがってみたまでだ。
そしたら、自然に空に舞いあがることができたまでだ。
それに、第一、バカじゃないか、そこのところのリクツは
よくわかりきっているのに、いつになってもツベコベと
こ生意気なこリクツばかりならべて、そのくせ、きたない土の
上をやっとはっているだけじゃないか。なぜ、ぼくがいうように、
思い切って飛び上がってみんのじゃ」
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