イモ 「ほれ、このとおり、いくら力いっぱい飛びあがってみても、
だめじゃありませんか」
ガ 「いや、それは、きみがぶさいくなからだ」
イモ 「じゃ、こんどはおもいきって飛びあがってみますよ」
ガ 「ヘタだなぁ、そんなことじゃ。 ぼくだったら、なんの苦も
なく地上をはなれてしまうのだがね」
イモ 「でも、ガ先生、わたしには、まだ、だいいち羽がはえて
いませんではないか」
ガ 「羽なんざ、どうでもよい。飛びあがろうという決心さえしたら
よいのだ」
イモムシは、いくら飛びあがっても、そのたびにバタリと落ちる
ばかりで、とうとうつかれて、目をまわしてしまいました。
第二のイモムシは、あまり熱心にガがすすめるので、
畑のまわりにたっている棒の頂上までのぼって、ポンと
上へ飛びあがろうとしましたら、かわいそうに、その下に
あった石の上へペチャコンと落ちて、腸をむきだして
死んでしまいました。
第三のイモムシは、いくらガがすすめても、私にはまだ
羽がはえていませんから飛べるはずがありませんといって、
そしらぬ顔で、あいかわらずウジウジと地上をのたくり
まわっていましたので、ぶじでした。
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