第四のイモムシは、ほとんど羽がはえていたときですから、ガが
ひとくち、さあ飛びなさといったら、すぐスッと飛べてしまいました。
そこで、ついにイモムシは、おおいに発憤して、生垣の頂上まで
よじ登り、そこから空へむかって飛びあがろうとしました。
そのとたん、ちようどすぐそばにあった金柑の木の葉の上へ、
チョコリンと落ちました。
ガ 「やあ、えらいえらい。うまく飛べたじゃないか」
イモムシは、すっかり空中にいるつもりで、
「ああ、気持ちがよい。なんと地上のものどもは、小さいな。
みんなコセコセとかせいどるわい。それにしてもわしには、
どこにも羽がはえておらぬが、なんと、羽なしで飛ぶなんて、
新機軸じゃないか」
と、得意に思いました。
地上の多くのイモムシどもも、このさまをながめて、ほんに、
あいつは、急に空が飛べるようになったんだね、あんな高い
あぶないところに平気でとまってけつかる、とほめました。
そこで、このイモムシどの、ますます得意になって、今にも
落ちそうな足場の上に、いっしょうけんめいにしがみついて
いましたが、しだいに、心の中では、
「なんと空中というところは、下から見たほどにもない、
たよりない、不自由な、せまくるしいところだな。 第一、
腹がへってきたが、いったいどうしたらたべものがえられる
んだろう。ああ、こまったな。しかし、いまさら友だちへ広言
をはいたてまえ、メソメソと下へ降りてゆくこともできず、といって、
こんなせまいところでは、動くことさえできぬし、こまったことだな」
と悲しんでいました。
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