しかし、地上のイモムシどもは、かれがほんとに羽化登仙したのかと
おもいこんでいましたので、じぶんたちも、なんでもはやく修業して、
ガになりたいものだなと、いっしょうけんめい努力しましたので、その後、
数日で、みんなそろって羽がはえて、空中にむかって出発することが
できました。
その中の一羽のガが、金柑の葉の上にしがみついているイモムシの
そばへきてもうしました。
「おい、きみ、いつまで、そんなところで居眠りをしているんだ。
ぼくらといっしょに、もっと美しい広い世界へ旅行しようじゃないか」
イモムシは、うらめしそうに、その顔を眺めつつ、なんだか身体が
おもくてしようがないが、飛びさえしたらどうにかなるだろうと、
おもいきって、
「よしきた、行こう」
と、手をつないで金柑の葉から飛びだしました。
そのひょうしに、羽のないかれは、今まで夜露ばかりのんで、
断食修業したおかげで、だいぶ前よりは身体がかるくはなって
いたとはいえ、どうしてもいっしょに飛びたつことはできません。
ついに、みるみる地上についらくして、悲鳴をあげました。
友だちは、
「まあ、気のどくなことだが、しかたがない。きみも羽がはえる
までは、やはり土の上で修業したまえ」
といいのこして、どこかへ飛んで行きました。
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