ぼたえもん童話集 『蛾と芋虫』④

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しかし、地上のイモムシどもは、かれがほんとに羽化登仙したのかと

おもいこんでいましたので、じぶんたちも、なんでもはやく修業して、

ガになりたいものだなと、いっしょうけんめい努力しましたので、その後、

数日で、みんなそろって羽がはえて、空中にむかって出発することが

できました。


その中の一羽のガが、金柑の葉の上にしがみついているイモムシの

そばへきてもうしました。


「おい、きみ、いつまで、そんなところで居眠りをしているんだ。

ぼくらといっしょに、もっと美しい広い世界へ旅行しようじゃないか」


イモムシは、うらめしそうに、その顔を眺めつつ、なんだか身体が

おもくてしようがないが、飛びさえしたらどうにかなるだろうと、

おもいきって、


「よしきた、行こう」


と、手をつないで金柑の葉から飛びだしました。


そのひょうしに、羽のないかれは、今まで夜露ばかりのんで、

断食修業したおかげで、だいぶ前よりは身体がかるくはなって

いたとはいえ、どうしてもいっしょに飛びたつことはできません。


ついに、みるみる地上についらくして、悲鳴をあげました。

友だちは、


「まあ、気のどくなことだが、しかたがない。きみも羽がはえる

までは、やはり土の上で修業したまえ」


といいのこして、どこかへ飛んで行きました。



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このページは、出口眞人が2010年8月18日 15:52に書いたブログ記事です。

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