一同「まるで、おまえさんは、神さまだね。われわれの運命をちゃんと知ってござるなんて」
小僧「おまえたちの運命は手にとるごとくわかっているわがはいにも、わがはい自身の
運命は、いっこうわからんので、よわっているのさ」
一同「なんと、上には上のあるもんですな」
小僧「もう、夜もふけたから、みんな、おやすみ。おまえたちも、それぞれによい畑に
まかれて、力いっぱい努力して、よい花を咲かし、よい実をこさえておくれ。わがはいも
これからいっしょうけんめいはたらいて、よい人間になるから・・・。では、おやすみ」
とあいさつして、小僧どのはそのままふとんの中へもぐりこんでしまいました。
一同は、はじめて自分たちの前途をきかされて、なんだか気がたって眠られぬ
ままに、また、小声でヒソヒソはなしだしました。
スイカ「なんと、皆のもの、聞いたか。今はこうおちぶれていても、先になったら、
おれがいちばんえらいんだそうだで。エヘン」
ナス「おい、先は先、今は今だ。そういばってもらうまいかい。おれだって、聞く
ところによれば、紫色の着物に紫頭巾でぼってりしたおなかをつき出して、
いい仙人になれるんだそうだからな、エヘン」
キュウリ「まぁ、おたがいに今からいばることはよそう。それよりは、いったい
われわれは実になってからどうなるんだろう」
スイカ「それは知れたことさ。人間さまに食われるんさ」
キュウリ「食われちゃ、痛いだろうね」
スイカ「そいつあいっぺん食われてみなくちゃ、ちょっとわからん。が、
とにかくだね、ようするにさ、すなわちその・・・人間に食われて、われわれが
人間になるんさね」
ナス「なるほど」
スイカ「ちぎる秋茄子か」
ナス「これちゃかすない」
キュウリ「してみるとだね。しまいのはては、われわれは人間になるんだね」
スイカ「まあ、いわば、そんなもんさ。しかし半分は糞というもんになって出るそうだ」
ナス「ああ、ここらではなしが落ちだよ」
一同「ウハハハハハハハ」
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