これを見た三郎丸は、相手が見るもいやしいよぼよぼの
乞食であると言う事も、荷物を持ってやったところで
一文にもならないということも、いっさい忘れてしまって、
おもわずその側へかけつけて行きました。
「おじいさん、くるしいでしょう。私がその荷物を
上まで持って行ってあげましょう」
といいながら、いたわるように乞食の背中へ手をかけて、
その顔をのぞきこみました。
「いいえ、いいえ。どういたしまして、もったいない」
乞食はあきれたような顔で、しばらく三郎丸を
見つめていましたが、やがてハラハラと
両方の目から玉のような涙をこぼしました。
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