これはさておき、欲深の六助どんは、最初のあいだは金があるにまかせて、なにごとも
調子よくいっていましたが、れいの「ああ、いやだ」「ひとをバカにしている」という口ぐせと、
村人の悪口とがしだいに凝って、いつのまにやら、ひとつの灰色の玉ができあがりました。
この玉が、ある晩、どこからともなく飛んできて、六助さんの寝床の上の天井のあたりを
ブラついていました。そして、スキがあったら、六助さんの寝床の中へもぐりこもう
もぐりこもうとしているのでした。六助さんはビックリして、
「やい、バケモノ、おれの身体へ近寄ってみろ。こなみじんに打ちくだいてやるぞ」
と、口では大きなことをぃっていましたが、腹の中はビクビクで夜もろくに眠ることが
できませんでした。
あるとき、玉がいいました。
「でも六助さん、私は、どうしたものか、あなたが好きでたまらないのです。
それだのに、あなたが私をおきらいになるのでしたら、いたしかたありません。
私は息子さんと仲よしになります」
その日から、今までひとなみはずれて丈夫であった六助さんの一人息子は、
急にねついてしまって、ウンウンとうなりはじめました。
コメントする