さあ家中は大騒動で、今までホコリだらけにしていた神床を急に清めてお燈明を
あげるやら、他人にはピタ一文出すのもいやなくせに、十里も二十里もあるところ
から自動車で院長さんをお迎えするやら、あらゆるてだてをつくしましたが、
それらもなんのききめもなく、病気はだんだんおもくなって、ついには骨と
皮ばかりになってしまいました。
こうなると、さすがの六助も、ごはんもろくくろく食えないほどしょげて、いままでの
自分の心得のわるかったことをシミジミと悔い、神さまにたいしても、心の底から
おわびをし、村の人にも、心の底から好意をもって、なにくれとなく世話を
しはじめました。そして、もうけただけのお金は、惜しげもなく村のために
まきちらしました。
さあ、こんどは、村の人たちも、しだいに悪口をいわなくなったばかりでなく、
ひとりが、
「なんと、六助どんも、ちかごろはかわったもんだね」
といえば、もひとりが、
「人間もあれだけかわればかわるものか」
と感心するようになりました。
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